サンゴ礁とは

古環境変動の記録者としてのサンゴ礁

 年輪を持つハマサンゴ群体(石垣島,名古屋大学 阿部さん撮影)

年輪を持つハマサンゴ群体
(石垣島,名古屋大学 阿部さん撮影)

サンゴ礁は環境変動に密接に関わって形成されます。このことは逆に,サンゴ礁とサンゴに,過去の環境変動が記録されていることを意味します。

 

サンゴ礁は海面すれすれまで作られますので,サンゴ礁のボーリング調査をすることによって過去の海面変化の歴史を復元することができます。 今から2万年前の氷河時代には,大陸の氷床に地球の水が集中して海の水が減り,海水面は今よりも100m以上低かったのです。 氷河時代が終わるとともに氷が融けだして,海面は1000年あたり10m以上(100年で1m以上)という今世紀の海面上昇より速い速度で上昇していきました。 海面上昇は,氷の融け方を記録しているわけですが,サンゴ礁は海面上昇を記録する正確な記録者であることがわかりました。

 

海面上昇は,世界のどこでも同じではありません。 氷が融けて海水が増えることによって,地球が変形したからです。 つまり,海面変動の地域的な差を明らかにすることによって,地球の変形の様子,さらには地球の内部の状態を明らかにすることができます。

 

サンゴは,枝状,テーブル上など様々な形を持っていますが,この中で丸い塊状のサンゴには石灰質骨格の成長速度が季節的に異なるため,木と同じ様な年輪が刻まれています。 成長速度は1年間に1cmほどです。サンゴの中には,高さ3mほどのものもありますから,そうしたサンゴには約300年間の記録が刻まれていることになります。 1 cmの年輪から0.5 mm ごとに試料を削りだして,その分析をすることによって,月単位の変動を復元することができます。 私の研究室では,琉球列島やパラオ諸島,さらにはインド洋からサンゴ年輪を採取してきて,その分析を進めています。 パラオのサンゴ年輪からは,過去50年間のエルニーニョの歴史を復元することができました。 喜界島では,化石サンゴの年輪から今から6000年前のこの海域の水温と塩分を復元することができました。 さらに現在は,インド洋で最近見つかったエルニーニョの兄弟ともいえる変動を,過去100年間にわたって復元する研究に取り組んでいます。


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